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皆さんは貴船神社という神社をご存知でしょうか?

貴船神社は京都の奥、鞍馬貴船に鎮座する神社です。貴船の地は山奥にあることから、夏は大変涼しく神社へ行く道すがらに流れる貴船川は涼を誘い、川縁では川床料理を楽しむことが出来ます。
叡山電鉄の鞍馬口駅に鎮座する鞍馬寺も、その平安の昔に牛若丸が修行したことで知られる有名なお寺ですが、鞍馬寺の山頂から(お寺は山の上にあるので)貴船神社まで、一時間ほどのハイキングコースで巡ることが出来ます。鞍馬山から貴船神社まで出る山道もパワースポットだらけのような場所が沢山ありますが、この貴船神社の雰囲気も、また神がかった不思議な美しさに満ちています。

2016年の年末に一度鞍馬寺から抜けて貴船神社を訪れたことがあるのですが、貴船神社は何度で追訪れたくなる神社です。今回は、その貴船神社の魅力をお伝えしたいと思います。

「きふね」の由来

創建の年は不明ですが、社伝によれば、神武天皇の母である玉依姫命が、黄色い船に乗って淀川・鴨川・貴船川を遡って当地に上陸し、水神を祭ったのが始まりだと伝えられています。社名の由来は「黄船」によるものとされ、奥宮境内にある「御船型石」が、玉依姫命が乗ってきた船が小石に覆われたもの、と伝えられています。「気の産まれる根源」が転じて「気生根(きふね)」になったとも言われています。

境内とご祭神

貴船神社の社殿は、本宮・結社(中宮)・奥宮の3箇所に分かれて建っています。それぞれの社殿に違うご祭神が祀られています。

本宮
本宮は高龗神(たかおかみのかみ)を祭神としています。伊弉諾命(いざなぎのみこと)の御子神で、水を司る神です。本殿・拝殿は2007年に改築された新しいものです。

結社(ゆいのやしろ)(中宮)
結社(ゆいのやしろ)は、本宮と奥宮の中間、本宮から上流側300メートルの場所にあります。真中に位置することから、中宮(なかみや)とも呼ばれています。 ご祭神は磐長姫。

磐長姫命(いわながひめのみこと)は縁結びの神として信仰されているのですが、縁結びの神とされることになった理由として次のような伝承があります。天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が磐長姫命の妹の木花開耶姫(このはなさくやひめ)と結婚しようとしたとき、姉妹の父の大山祇命は、磐長姫命も共に奉った。しかし、瓊瓊杵尊は木花開耶姫とだけ結婚したので、磐長姫命はそれを恥じ、「縁結びの神として良縁を授けん」と言って当地に鎮まったと言われています。(磐長姫命は醜くかったので、瓊瓊杵尊は彼女を父神のもとへ返したのです)。

貴船神社のご利益は良縁・縁結びが有名なので、神社では願い事を書いて供える「結び文」が授与されています。
以前は、境内の細長い草の葉を結び合わせて縁結びを願っていましたが、現在は植物保護のため本宮で授与される「結び文」に願文を書いて指定場所に結ぶことになっています。境内には、「磐長姫命の御料船」として平成8年に奉納された船形の自然石「天の磐船」も置かれています。

奥宮
奥宮は本宮の上流側700メートルの場所にあり、以前はここが本宮でした。闇龗神(くらおかみのかみ)を祭神としていますが、高龗神と同じ神であるとされています。
(CC: mariemon)

文学と深くかかわる貴船神社

和泉式部は平安時代の有名な歌人であり、和泉式部が貴船神社に参拝したときの歌が後拾遺和歌集に収録されています。平安時代は通い婚であったため、彼女が「男(夫の藤原保昌)に忘れられている頃、貴船神社に参拝し、御手洗川に蛍が飛んでいるのを見て詠んだ短歌」として、歌が残されています。
「 ものおもへば 沢の蛍も わが身より あくがれいづる 魂たまかとぞみる
(意訳:恋しさに悩んでいたら、沢に飛ぶ蛍も私の体から抜け出した魂ではないかと見える)」という歌でした。

それに対して貴船明神が返したと伝えられる短歌は、「 おく山に たぎりて落つる 滝つ瀬の 玉ちるばかり ものな思ひそ (意訳:奥山にたぎり落ちる滝の水玉が飛び散るように、(魂が飛び散ってしまうほど)思い悩んではいけない) 」です。                    こちらも後拾遺和歌集に収録されています。また、奥の宮には和泉式部の歌碑も残されています。
(CC: mariemon)

貴船神社の四季

貴船神社ほど四季折々の風景が美しく、様々な顔を見せてくれる神社は他にはありません。春には桜、初夏から夏にかけての新緑、青もみじ、そして今のような秋には色づいた紅葉が見せてくれるライトアップの風景。そして、雪の中の貴船神社…
その季節ごとに変わる様々な顔が見たくなり、何度でも訪れたくなる神社なのです。

(春)

 (夏)

 (秋)

 (冬)

写真はすべて、(出典:貴船神社 フォトギャラリー)

まとめ

いかがだったでしょうか?貴船神社は本殿へと抜ける灯籠階段が有名ですが、四季折々で本当に様々な顔を見せてくれます。春夏秋冬で映る景色が全く異なり、その美しさゆえに何度でも訪れたくなる神社です。私が2016年末に訪れた際には、ここで結婚式が行われていました。新郎新婦は厳かに本殿でお式を挙げておられました。

貴船神社は水占いのおみくじ(¥200)でも有名です。このおみくじは、社務所でおみくじを引いてから、境内の池でおみくじを濡らすと運勢が浮かび上がってくるというもの。外国人参拝客も多く、浮かび上がったおみくじにはQRコードがついていて、それをスマートフォンで読み込めば、英語で運勢の書かれた説明が見られるという、心憎いサービスも充実しているのです!確かに、外国人参拝客が沢山いらっしゃいました。

貴船神社は伝統だけに囚われているだけではなく、先ほどのおみくじのQRコードの例にもあるように様々な参拝客を取り込もうと色々な試みを行っています!女性の参拝客に大人気の御朱印ですが、神社では御朱印ふくろが授与されています。今回、秋季節限定で京都発の布製手作りかばんメーカー一澤信三郎帆布(いちざわしんざぶろうはんぷ)と貴船神社がコラボレーションで製作した御朱印ふくろを頒布。頒布価格は各3,500円です。期間限定につき、なくなり次第終了、インターネットでの取り扱いは行っていないとのことです。詳しくは電話で問い合わせましょう。(出典:貴船神社 お知らせ)

とても素敵な御朱印ふくろ、私も欲しくなりました!

心が疲れてふと癒しが欲しくなったとき、貴船神社はそんなときに訪れたくなる神社です。訪れたら水の神様の優しい愛や清々しい緑の景色に気持ちが落ち着くに違いありません。これからは紅葉が美しい季節、ぜひ、貴船神社に行かれてみてはがでしょうか?

<アクセス>
最寄り駅:叡山電車「貴船口」駅
※貴船口駅下車、京都バスに乗り換え「貴船」下車
※貴船口駅から徒歩の場合は約25~30分(2km)貴船口から神社までは直線の一本道です。

最寄りのバス停:京都バス(33番)「貴船」
※貴船下車、貴船神社までは徒歩約5分です