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近鉄奈良駅から徒歩でも行ける「古都奈良の文化財」の一部として世界遺産に

登録されている興福寺。興福寺の魅力は大変多く、建築物もさることながら、

多くの国法・重要文化財に指定された仏像が安置されています。その数もさることながら、

興福寺では何といっても仏像界のプリンス、阿修羅を見ることができる!

阿修羅は名だたる仏像の中でも特に有名で、阿修羅ファンクラブなるものまで

存在します(私も阿修羅には強く惹かれるものがあるので理解できる)。今回は、

女性ファンも多い阿修羅も含めて興福寺に安置されている仏像の魅力を

お伝えしたいと思います!

1.まずは国宝館と東金堂へ

興福寺の成り立ちは、藤原氏の祖・藤原鎌足とその子息・藤原不比等ゆかりの寺院で、

藤原氏の氏寺であり、古代から中世にかけて強大な勢力を持っていました。

奈良時代には南都六宗の一つ、法相宗の大本山の寺院で、南都七大寺の一つに

数えられていたお寺です。

興福寺へ着いて、有名な五重塔や南円堂を一巡したら、東金堂と国宝館で仏像を

拝観しましょう。興福寺は治承4年(1180)の平家の南都(奈良)の焼き討ちなどで

何度も火災に見舞われました。しかしながら、今でも数多くの仏像を残しています。

国宝館に安置されている仏像は全部で51体。それだけでも膨大な数ですが、

国宝館以外にも、各々の建築物に仏像が安置されています

2.第一人気は…何と言っても、阿修羅像!

興福寺の仏像の中で第一の人気を誇るのは、何と言っても”阿修羅“像でしょう。

3つの顔と6本の腕を持つこの釈迦の守護神は、見る角度によっても違う表情が

変わりますが、特に正面の愁いを浴びた表情には素晴らしい美しさが感じられます。

なぜ阿修羅はこんなにも人気があるのでしょうか?私なりに考えてみると、

阿修羅の細い身体からは、少年のような、男性とも女性とも区別のつかない

中性的な魅力が漂っていますよね?体はとてもスマートで、武神なので

あくまで男性なのに、男性臭さが感じられない、あくまで綺麗な少年のような

阿修羅の雰囲気。どこか羽生結弦君を思わせるような王子様…それがまさしく

興福寺の阿修羅像であり、それが若い女性から年配の方までを惹きつける

大きな魅力となっているのではないかと感じました。

・阿修羅って、どんな神さま?
阿修羅は古代インドでは”アスラ“という神でした。古代インドでは生命生気

善神でしたが、帝釈天の台頭に伴いヒンドゥー教で悪者としてのイメージが定着し、

地位を格下げされてしまいました。帝釈天とよく戦闘した神です。そんな阿修羅

でしたが、仏教に取り入れられてからは仏を護る守護神として取り扱われるように

なりました。

インドで古くから信じられてきた異教の八つの神を集めて、仏教を保護し、

仏に捧げ物をする役目を与えて、八部衆とします。阿修羅はこの八部衆のうちの

一つです。仏教の教えに基づいた神ではないので、その生い立ちや性格、

また姿やかたちは様々に説かれ、複雑で不明な部分が多くあります。

仏教に取り入れられてからも、異教の神の姿のまま表現されることが多いのです。

インドでは熱さを招き大地を干上がらせる太陽神として、常にインドラ(帝釈天)と

戦う悪の戦闘神でしたが、仏教に取り入れられてからは、釈迦を守護する神と

説かれるようになりました。

http://mtweet.biz/1751  (興福寺・阿修羅像)

阿修羅の姿は、基本的には三面六臂(三つの顔に六つの腕)で描かれる

ことが多いが、三面四臂(三つの顔に四つの腕)や三面二臂(三つの顔に

二つの腕)の阿修羅像も存在します。興福寺では、阿修羅も含めた八部衆像が

安置されています。

・八部衆
阿修羅像(あしゅらぞう)
五部浄像(ごぶじょうぞう)
沙羯羅像(さからぞう)
鳩槃荼像(くばんだぞう)
乾闥婆像(けんだつばぞう)
迦楼羅像(かるらぞう)
緊那羅像(きんならぞう)
畢婆迦羅像(ひばからぞう)

八部衆は、天平6年(734)に創建された西金堂本尊釈迦如来像の周囲に安置

されていた像で、乾漆(かんしつ)造という技法で造られています。この造り方は、

まず心木(しんぎ)を立てて、塑土(そど)を用いてだいたいの形を造り、その上に

漆で麻布を数枚貼り重ね、ある程度乾燥させた後、背中を切り開いて、

中の土を取り出します。このように空洞になった内部に板や角材を補強材として入れ、

その後木粉(もくふん)などを混ぜた漆で表面を整え、金箔や彩色を施して仕上げた

ものです。

・阿修羅の3つの顔

阿修羅の顔は三面を向いています。もちろん、正面から見たお顔が一番有名ですが、

正面以外にも左右にそれぞれ二面お顔がついています。この3つの顔を比べてみると、

また表情が微妙に違っていて面白いのです。3つの表情はまるで少しずつ成長していく

少年を思わせます。ちなみに正面のお顔は涙ぐんでいるそうです。

 (興福寺・阿修羅像)

・他の阿修羅像
ちなみに私もよく知らなかったのですが、阿修羅像を祀っているお寺は全国に多々

あります。ヴィジュアル的に一番有名なのはこの興福寺の阿修羅ですが、その他

奈良の法隆寺や京都の三十三間堂にも阿修羅像は安置されています。表情を

見比べてみると…

https://www.pikcat.com/tag/%E9%98%BF%E4%BF%AE%E7%BE%85%E5%83%8F  (阿修羅像・三十三間堂)

http://asura.kokaratu.com/asura02.html
(阿修羅像・法隆寺)

三十三間堂の阿修羅は猛々しく憤怒の表情を浮かべていますよね。それに対して法隆寺の

阿修羅は興福寺の阿修羅に似た感じの少年のような趣があります。しかしながら、

もともとは軍神だったバックグラウンドを考えると、三十三間堂の阿修羅が

本来の姿なのかもしれません。一番人気の興福寺の阿修羅がなぜあのような

憂いを帯びた表情なのかはまだ分かっていないそうです。

3.阿修羅以外の仏像

・天燈鬼、龍燈鬼
邪鬼は一般に四天王像に踏みつけられた姿で表現されることが多いのですが、こ

2体は仏法を照らす役割を与えられており、誇らしげに燈明を持っている姿や

表情がひょうきんで、可愛らしさがあります。独立して、尊像になりました。

像内に建保3年(1215)に法橋庚弁が造ったとする書きつけがあります。阿と吽、

赤と青、動と静とが対比的に表現された鬼彫刻の傑作です。

 http://www.kohfukuji.com/property/cultural/104.html (興福寺・天燈鬼、龍燈鬼)

・東金堂 薬師如来像
東金堂には本尊の薬師如来坐像が安置されています。向かって右側に日光菩薩、

左側に月光菩薩が立っておられます。もともとは白鳳・奈良時代に作られたもの

でしたが、何度も焼失の憂き目にあい、現在あるものは室町時代に東金堂が再建

再建された際に制作されたもの。


https://blogs.yahoo.co.jp/kusoku_zeshiki/66079400.html (興福寺・日光 月光菩薩)

また、須弥壇の四方には四天王像が、薬師如来坐像の周りには、十二神将立像も

配置されています。

http://gypsub.blog.fc2.com/blog-entry-57.html  (興福寺 十二神将)

・仏頭

鎌倉時代に、飛鳥の山田寺から興福寺東金堂へ本尊として持ち込まれた白鳳仏。

その後東金堂の火災により体部が消失し、頭部のみが残存している。国宝館で展示。

興福寺の仏頭は、いつ誰が制作したものなのか、記録がしっかりと残っていることで

貴重な仏頭とされています。製作者は蘇我野倉山田石川麻呂(そがのくらやまだ

いしかわまろ)。685年の制作です。

http://kanagawabunkaken.blog.fc2.com/blog-entry-41.html (興福寺・仏頭)

・南円堂 不空覇索観音菩薩坐像(ふくうけんじゃくかんのんぼさつざぞう)

南円堂に安置されているのは不空覇索観音菩薩坐像。変化観音(へんげかんのん)

の一つで、手に持つ羂索(けんさく)(網)で、衆生の願いを網ですくってくれる観音様

です。文治5年(1189)に約15ヶ月を費やして、仏師康慶とその弟子達が造ったもので、

重量感のある体、威厳のある顔に、天平時代や平安時代初期彫刻の伝統を伝えます。
http://www.kohfukuji.com/property/cultural/105.html  (興福寺・不空羂索観音)

・北円堂  弥勒如来像、無著像(むちゃくぞう)
伽藍の内部は春と秋に公開され、本尊の弥勒如来坐像や無著像などを拝観できます。

http://www.kohfukuji.com/property/cultural/110.html (興福寺・弥勒如来坐像)

http://www.kohfukuji.com/property/cultural/111.html (興福寺・無著像)

4.まとめ

今回は興福寺に安置されている阿修羅を中心に、有名な仏像群をご紹介してきました。

ここに紹介した以外にも、板彫十二神将像(かつては東金堂本尊の台座に貼り付けられて

いたと考えられる)や、十人弟子立像など、まだまだ見どころとなる仏像は

沢山あります。国宝や重要文化財を見に行くことも目的もいいのですが、

お薦めは何かお気に入りを見つけること。そして、その仏像が作られた歴史的

背景なども少しおさらいしてから見に行くと、より理解も深まり、仏さまにも

より親近感が湧くのではないでしょうか?

会いたい人に会いに行くような、ワクワクした気持ちでぜひ、興福寺を訪れてみて

下さい。

興福寺 アクセス:http://www.kohfukuji.com/access/info.html