神社やお寺、パワースポットブームと相まって、今は様々なメディアで
取り上げられています。神社もお寺も生活の中の様々なところで
日本人の生活の中に溶け込んでいて、その二つの違いを実感する
場面は少ないかもしれません。
そもそも神社は日本古来の宗教である神道、お寺は仏教に基づいて
建てられた祭祀施設なのですが、この二つの施設はどんな風に
違うのでしょうか?また何か共通点はあるのでしょうか?
ここでは神社とお寺の境内の中の造りや建物、また神社にしかないもの、
お寺にしかないものなど、建築物の観点から二つの違いや共通点を
探ってみたいと思います。
1.神社の施設と建物 建築様式
神社境内模式図 神社境内模式図 参考文献『神道の本』(学究研究社)
①鳥居 ②石段 ③参道 ④手水舎 ⑤灯籠 ⑥神楽殿 ⑦社務所・納札所 ⑧絵馬掛け ⑨摂末社 ⑩狛犬 ⑪拝殿 ⑫瑞垣 ⑬本殿
上記は一般的な神社の敷地内の造りと建築物の種類を紹介しています。
鳥居の内の区域一帯を、「神霊が鎮まる神域」とみなされ、神社の周りには
鎮守の杜という森林があることが多いです。御神木といわれる木に、
注連縄が結ばれている場合もあります。神社の入口には、境内と俗界の
境界を示す鳥居があり、社殿まで参道が通じています。参道のそばには
「身を清める」手水舎、神社を管理する社務所などがあり、大きな神社では
神池や神橋を持つものもあります。
社殿は本殿(神殿)や拝殿から成ります。人々が普段参拝するのは拝殿で、
神体がある本殿は拝殿の奥にあります。本殿と拝殿の間に参詣者が幣帛を
供えるための幣殿が設置されていることもあります。神社の敷地(境内)
には、その神社の祭神に関係のある神や本来その土地に祀られていた
神を祀る摂社や、それ以外の神を祀る末社があり、両者をあわせて
摂末社と言います。境内の外にある摂末社は境外社と呼ばれています。
多くの神社に共通する施設 (それぞれの施設には意味がある)
鳥居(とりい)
参道(さんどう)
燈籠(とうろう)
狛犬(こまいぬ )– 神使、眷属の石造。
手水舎(ちょうずや) – 身を清めるための手水の場が用意されている。
拝殿(はいでん) – 本殿の手前にある参拝用の施設。
幣殿(へいでん) – 拝殿や本殿と一体化している場合が多い。
本殿・神殿(ほんでん・しんでん) – 神体の鎮座する建物。
神楽殿(かぐらでん) — 神楽を奉奏する為の建物。
舞殿(まいどの)
絵馬殿(えまでん)
摂社・末社(せっしゃ・まっしゃ)
社務所(しゃむしょ)、授与所
古札所(こさつしょ)・納札所 – 祈願の御札や古い御守りなどを納める。
社庭(庭園・付属公園・神苑など) 自然崇拝物(御神木・鎮守の森などの樹木、さざれ石・要石などの石、枯山水、湧水、山など)
石碑・石造(顕彰碑や記念碑など)
本殿と神殿は別とされることもありますが通常は同一の場合が多く、
常設とされる施設でも、絵馬殿など時代によって変化するものもあります。
また、摂末社がない神社や、摂末社に本来の祭神(その土地の鎮守神)が
祀られる事もあります。
すべての神社が同じ作りというわけではないので、あくまでご参考に。
2.神社 本殿の様式の種類
本殿の建築様式は大きく平入と妻入に分けられ、さらに屋根の形状を
以て分類します。それ以上の細部をみると、各神社独特の様式で
あることが多く、種類が多くなりすぎて、分類できなくなってしまいます。
最古の様式は神明造や、大社造、住吉造といった直線的な形状の屋根を
持つものとされるが、現在一般的によく見られる様式は流造で、
春日造がこれに次いでおり、いずれも流線的な形状の屋根となっています。
・ 妻入様式
大社造(たいしゃづくり) – 出雲大社など。
春日造(かすがづくり) – 春日大社など。
住吉造(すみよしづくり) – 住吉大社など。
大鳥造(おおとりづくり) – 大鳥神社など。
http://blog.livedoor.jp/m_house4/archives/65304400.html
- 平入様式
神明造(しんめいづくり) – 伊勢神宮など。
流造(ながれづくり) – 賀茂神社など。 両流造(りょうながれづくり) – 厳島神社など。
入母屋造(いりもやづくり) – 御上神社など。
日吉造(ひえづくり) – 日吉大社など。
八幡造(はちまんづくり) – 宇佐神宮など。
- 他の様式
祇園造(ぎおんづくり) – 八坂神社など。
権現造(ごんげんづくり) – 北野天満宮、日光東照宮など。
浅間造(せんげんづくり) – 富士山本宮浅間大社など。
寝殿造(しんでんづくり) – 宇治上神社拝殿など。
隠岐造(おきづくり) – 水若酢神社など。
吉備津造(きびつづくり) – 吉備津神社など。
織田造(おだづくり) – 劔神社など。
尾張造(おわりづくり) – 真清田神社、津島神社、尾張大国霊神社など。 大縣造・三棟造(おおあがたづくり・みつむねづくり) – 大県神社など。
水分造(みくまりづくり) – 建水分神社・千早赤阪村など。
神社の例をいくつか挙げると・・・
大社造 熊野大社本殿(島根県松江市)(Wikipedia)
神明造 伊勢神宮内宮正殿(三重県伊勢市)(Wikipedia)
典型的な神社の建築様式を挙げてみました。こうして見ると、屋根の形が皆
微妙に違っていて、その時代時代の建築様式も反映されており面白いですね!
3.神社にはあって寺院にはないもの
神社にはあってお寺にはないものの典型的なものと言えば、“鳥居”です。
お寺には鳥居はなく、山門があります。神社では、鳥居をくぐり、一段を
上がって拝殿へ向かう途中にの拝殿前には狛犬(殆どの場合)が左右に
控えていらっしゃいますが、この狛犬も寺院にはいません。寺院には代わりに
不動明王がいらっしゃる場合があります。
なぜ神社には鳥居があるのでしょうか?神社には、神が降りてくる神域があります。
そして、神の領域である神社の敷地=神域に降りた神様と、人が住む世界とを区別し、
お互いの存在を分かち合いながら住み分ける為に鳥居を建てたとされています。
仏教にはこのような考え方はありません。
まとめ
今回は基本的な神社の境内の造りと、拝殿の神社建築の説明をご紹介しました。
建築物という観点から神社を見ると、またその一つ一つには意味があり、
新たな発見もあります。
神社の建造物の造りや成り立ちを調べていくうちに、改めて神社は神様が
おいでになる神聖な場所であり、参拝する目的の一つに自分の罪や穢れを
祓ってもらうということがあるのだと分かりました。
ただ、パワースポットだからとお参りするのではなく、建物や構造物の
成り立ちも知っておくことで、お参りに対しての理解も深まると思います。
心新たにして、また神社の神様へお参りに行きましょう!